瑞希も息吹へと身体ごと向け、こそ、と耳打ちするように言う。



「柊くんの前だと息吹がただの女の子みたいで可愛いなあってこと」




息吹は驚いたように目を見開いてから、慌てて口を開く。その黒目は困惑を表したように泳いでいる。




「そ、そんなことないよ」

「そっか。瑞希お姉さんの見間違いかあ。残念」

「もう、からかわないでよ」

「ごめんごめん」




息吹が恥ずかしそうに瑞希の肩にもたれかかる。瑞希はけらけら笑うだけ。そんなふたりのもとにcoc9tailのメンバーもやってきて、楽しげに混ざる。



みんないつも通りに笑っている。まるでこれがcoc9tailとして最後のアルバムになることなど知らないように。でもみんな心のどこかできちんとわかっている。それでもいつも通り笑っているのだ。




「今日も頑張ろうね」




楽しそうに瑞希へ寄りかかるメンバーに、瑞希はいつも通り笑いながら言った。