カフェラテを飲んでいた瑞希は「おかえり」と息吹を迎え入れてから、少しいたずらな笑顔を見せる。




「仲良しそうで何より」




瑞希の意味ありげな言葉に、息吹は「別に普通だよ」と恥ずかしさを隠すように呟いた。



美聖と息吹の同居は、事務所の上の者、双方のマネージャー、そしてcoc9tailのリーダーである瑞希しか知らない。


他のメンバーに打ち明けることは上の者たちが許可しなかった。秘密を知る者が増えればリスクも増える。どこから情報が漏れるかわからないからだ。



瑞希は親のような瞳で隣の息吹を見つめる。息吹はいつも孤高の美しさで人を魅了して笑顔にしては、当の本人は笑顔の裏でいつも苦しそうに息をしていた。


そんな彼女が、今、美聖という存在の前ではあどけなく笑っている。それが瑞希は嬉しかった。




「柊くんがいてくれてよかった」

「え?」




息吹が瑞希の方を向いて前かがみになる。ゆるりと巻かれた彼女の黒髪がふわりと揺れる。


首につけられた真珠のネックレスの輝きをものともしない美しい顔立ちは、女の瑞希にとっては常に憧れだった。


そしてそれ以上に美しさに溺れぬ息吹の努力家なところを尊敬して、心配だった。