「すみません私、皆さんにご迷惑を」

「大丈夫。俺も初めての撮影は死にたくなったから」

「え?」

「自業自得なんだけどね」



甘い笑みから零れる美聖の言葉は物騒そのものだ。目を見開く理々杏の瞳から雫が溢れる。美聖はハンカチを差し出しながら言う。




「次のシーンは俺とだけだから、ゆっくり肩の力抜いて好きなようにやってごらん。そしたら大丈夫」




美聖の低く柔らかな声に、理々杏の瞳からぼろぼろと涙が零れ落ちる。




「すみませっ、ありがとうございます、」





理々杏はひとしきり涙を流した後、メイクさんに泣き跡を隠してもらい、一発でオーケーを出した。


そしてその後の美聖と理々杏のシーンは今までの時間を取り戻すように、スムーズに進むのだった。