美聖は、少しだけ内容を選ぶように宝石のような瞳を数度瞬きさせたが、観念したように薄い桃色の唇を開いた。




『……coc9tailの黛 息吹さん、です。』




マイク越しに響いた美聖の声は会場中の全員に届いているのに、その予想だにしていなかった人物の名前に、一瞬静まり返る。会場がその名前を飲み込むに時間がかかったようだった。



切り返すことも忘れて呆気に取られていた司会者が、慌てて我に返りぎこちない笑みで言う。





『な、なるほど。黛 息吹さんとは今回の撮影で何かご交流があったんでしょうか?』




そんなのあるわけがないだろう。

会場中の無言のツッコミが入る。だが、司会者はそんなこと百も承知だったが、咄嗟に出た受け答えがそれしかなかったのだ。