ジ、と力強く見つめてくる息吹とは相対しているのに、その根底にあるものは同じだ。




「おれが息吹に近づくなって言ったら、潔く手を引く?」




周音はそう言うと、ソファーの肘掛に肘をつき、頬杖をついた手の指先で自身の唇を撫でる。その様から、サスペンスものを観ている時に人が結末を予想している時のような、そんな余裕が滲む。



美聖は一度、唾を飲み込んでから、自分よりも圧倒的強者である周音を、精一杯見つめ返した。




「他なら何でも差し出します。でも、息吹さんだけは、譲れないです」




はっきりと言い切った美聖を、周音が緩やかに口端を持ち上げたまま眺める。周音の、小さな顔に添えられた手のうちの小指が、下唇を、するりと、撫でる。周音は美聖を吟味したのち。