「"ただの息吹のファン"が随分と頑張ったね」
「あ、いえ。その、ひとまず、息吹さんの新しい家が見つかるまでの間になります。どうぞ、俺のこと煮るなり焼くなり好きにしてください」
美聖が言うと、周音はキョトンとして、それから、口元に手を当てて笑った。その、垂れた目尻のすぐ下に3つ連なるほくろがやたらと色っぽい。
周音は、ふふ、と笑ったまま美聖の顔を覗き込むように下から見る。
「君、そんなこと言いにきたの?」
「はい。周音さんと息吹さんが兄妹である前に各々を尊重しているのはわかってます。でも、やっぱり周音さんにとって大事な妹さんじゃないですか。だから、」
「おれが駄目って言ったら同居しないの?」
「え?」
周音の目が弧を描いたまま、すう、と細まる。人の心の奥底を見透かすような、見定めるような視線。