「えっと、」

「ちょっと、まだ考えてたの?」



錦城の助け舟に相槌を打ちつつ、目を泳がせる。その先で、客席の女性客が手にするうちわが目に入る。美聖という文字を囲うのは、紫。息吹のメンバーカラーだ。



「恋人の秘密ごと、愛したいですね」



その紫に、答えた。



「話してくれても、話してくれなくても、その秘密の部分も、その人を構築する一面だと思うし、その人が自分の愛する人なことには変わりないので。」




するりするりと川が下流へ流れていく摂理のように、美聖の言葉が意味を持って形を成す。