片平が運転する車が再び停止する。窓の外を眺めていた美聖は、何か言いたげにミラー越しに美聖を見つめてくる片平に声だけで返事をした。




『片平さん、ごめんね。今回の件だけはどうしても引けない』



正しさや秩序だけでは、掬いきれないものは確実にある。


美聖の答えに、片平は小さく溜息で冷戦を告げた。息吹からの連絡で、向こうも同じような状況であることを察した。




「それじゃあ戻りまして、柊さんお願いします」




インタビュアーの声に、美聖は我に返る。すっかり記憶の旅に思い耽っていた美聖は、慌ててマイクを口元へ運ぶが声が出てこない。