いつも凛としていて、どこまで澄んだ息吹の瞳が、ほんの少し、砂粒程度の不安に駆られている。



『こんな危ない橋を渡る私を、受け入れて大丈夫なの? 離すなら、今だよ』



息吹の語尾が微かに震えた。


美聖は息吹を見つめ返す。そして、自身を彼女に照らし合わせる。


例えば、美聖の人生の柱となっている俳優業が来年から跡形もなく消えたとする。


もちろん今まで成してきたことは消えない。それは逆をいえば、足枷になるともいえる。



《───こういう時、私って本当に世間知らずなんだなあって身に染みちゃう》

《──来年から私はただの一般人になるんだもの。頼れないよ》