「またね」

「またね」



美聖と息吹が手を振り合う。


その微笑ましい光景は、その日のうちに8回続いた。


つまり、美聖は最も倍率の高い息吹との握手券を8枚も手に入れたのである。




「片平さん、俺はもう手を洗わないよ」

「オタクみたいなこと言わないでくださいよ」

「やだな。俺はオタクの鑑になりたいんだよ」

「あなた自分の顔の価値自覚してますか。オタクされる側ですよ。まあ元気が出たみたいでよかったです」

「うん。本格的にドラえもんを探そうと思う」

「……見つかるといいですね」

「うん」

「……(マジでこの人息吹さんのことになると頭おかしいんだよな)」




片平は運転しながら、バックミラーに見える美しい男のちぐはぐさに笑ってしまった。