だが、今回ばかりは美聖の涙に耐えきれなかったのだろう。


美聖はその優しさに触れてサングラスとマスクを外し、涙で濡れた頬を拭う。



急に現れた国宝級の美形の素顔に、会場がざわめく。泣き声や黄色い声が入り交じって異空間になっている。




「お、お次の方どうぞ、」




スーツ姿のスタッフが美聖を見て、ロボットさながらの誘導をする。



彼は涙をしっかり拭い、深呼吸をして、『息吹推しの柊 美聖』として、息吹が中へ待つ仕切りの中へ、進む。




「こんにちは。」




美聖が足を踏み入れた途端、白い仕切りの中で、女神が微笑んで手を振っていた。


「ヒュッ」と美聖の呼吸が止まる。