首を傾げる美聖に、息吹の凛とした声が届く。
〈敬語やめません?私たち、お友達になったんですから〉
「はい、あ、うん、そうですね、あ、うぃす」
〈でも私、年下なので敬語の方がいいですか?〉
「いえ!っううん!」
〈そっか。ありがとう。〉
息吹は嬉しそうに鈴を転がすように笑うと、〈それじゃあ〉と言う。切り上げるような声に、美聖は、少し寂しさを覚える。
ファンの一線を越えて、嬉しいことが大きくなると、その分、寂しさも大きくなる。欲しがりになる。
〈おやすみ。美聖くん〉
でも、やっぱりいつだって息吹は美聖に嬉しい方を多くくれるのだ。
「うん。おやすみ、息吹さん」
その日、美聖の夢には息吹が出てきた。