美聖の心休まる場所などひとつしかない。──息吹だ。


ここ最近の彼が不安定だったのは、確実に息吹に関することだろう。


美聖は息吹のことで悩み、今日、息吹で救われたのだろう。




「(息吹さん、僕のためにも美聖さんとワンチャンないだろうか)」




そんなことを思いながら、片平はちらりと鏡越しに後ろの美聖を見る。


緊張し過ぎて今までに見たことがないほどそわそわする美聖に、ああ、道は遠いなと悟った片平であった。