血の滲むような努力をしても、一番は確約されていない。


常に人気との戦いで、笑顔の絶えないアイドルの裏は、ピリピリとしている。




美聖が、息吹を見上げる。


何の躊躇いもなく、人のために跪ける男。それが高い服だろうが、極寒の地だろうが、彼はきっと、膝をついて、相手を見上げる。




「あ、こないだはチョコとほっとレモンありがとうございました。凄く美味しかったし、嬉しかったです。勿体なくて、なかなか食べられなかったけど」





そう言って美聖は、照れくさそうにはにかむ。細められた目に長い睫毛が翳を落とす。非の打ち所のない美しい顔立ちは、一見近寄り難いのに、美聖の人柄で柔和されて、甘い響きをもたらす。




「("国民の王子"、か。みんなよく見てるんだな)」




ずっと黙り込んでいた息吹は、そっと、美聖の耽美な顔に手を伸ばした。