美聖がふたりのもとまであと五歩になったところで、男の方を向いていた息吹が、美聖に気がつく。驚いたような顔をする。 「息吹さんっ」 境界線を引かれる前に、美聖は息吹に手を伸ばす。 男から遠ざけるために、その華奢な肩に腕を回し、ぐ、と自分の方へ引き寄せる。 「…え、っ」 息吹がもともと大きな瞳をさらに見開いて、美聖を見上げる。 美聖はそんな彼女を抱き寄せたまま言った。 「ファンの一線、越えてもいいですか」