《──推しが結婚するってなったらファンはどう思うの?》
《──でも、推しが幸せになるのはファンが何よりも望むことだから、祝福しますよ》
そして、息吹が触れていいと思うのは、美聖よりも、向こうなのだ。
《──それを聞いて、安心しました》
「(……安心なんてしないでほしい)」
立ち止まった美聖に気がつき、先に進んでいた翠が振り返る。
いつもと違う美聖の雰囲気に、翠が訝しげな顔で彼に声をかける。
「柊さん?」
「……。」
美聖に翠の声は届いていない。息吹だけを見つめて、色素の薄い綺麗な双眸を切なげに揺らす。