息吹は男の腕を振り払うこともなく、彼の方へ顔を向けて笑っている。
《──記者の目があって外に出られないの》
ひとりの時も警戒しているような息吹が、人の入れ替えが激しいテレビ局で、男相手に笑っている。
「息吹ちゃんっていつ寝てるの?寝る暇なくない?」
「私寝るの大好きですよ。どこでも寝れます」
「えーうけんね、可愛い」
「ありがとうございます」
美聖が見つめる先、息吹は決して彼には気がつかない。隣の男と楽しそうに笑って話している。
トップアイドルとして息吹が今までスキャンダルをすっぱ抜かれたことは、ただの一度もない。……だからきっと、どこかで、安心していたんだ。