「柊さん最近顔死んでません?」



翠の遠慮のない物言いに、美聖は「そんなことないよ」と死にそうな感情を押し殺して笑った。



「嘘だ。絶対なんかありましたよね。こないだから元気ないですよ」

「本当に元気だけどな。翠さんは人をよく見てるんだね」

「柊さんだから、ですよ」

「……、」



翠の真っ直ぐな言葉が、美聖にはとても眩しい。どうしてそんなに躊躇いなく直線で進めるのだろう。


美聖は、"俳優"である自分の存在が大きくなる度に、ただの柊 美聖という自分が心もとなくなっていくのを感じている。



《──アイドルがファンに用になることはもうこの先ないわ》



猫のように大きな瞳が、鮮やかな色のハイヒールが、ふとした時に美聖の胸を締め付ける。