握手会場はふたつの意味で沸いていた。


ひとつめの正規ルートの盛り上がりは、今日ここに来ている人達の目当てである行列の先にいる9人の美女に。

そしてもうひとつの非正規ルートといえば。




「マジで柊 美聖なんだけど。やば。顔ちっっさ」

「列の中でひとりだけ完全に浮いてる。握手される側じゃん」

「待って本当にいた美聖くん。えぐ。でもなんか可愛い。めっちゃ前しか見てない。」

「それ。息吹しか見えてないの草」



言わずもがな、柊 美聖である。


息吹の握手券を握りしめて、黒いキャップを深く被り、サングラスにマスクをつけているが、圧倒的な芸能人オーラが隠しきれていない。