「(───……なにが、サラブレッド、だ)」
息吹は歌を口ずさみながらリズムを取る。そのまま不意に天井を見上げる。
絶対零さぬようにと、上を向いた彼女の瞳の縁から、耐えきれなくなったように透明な雫が白い肌を伝う。
「あーもう泣くな泣くな泣くな泣くなッ」
息吹が悔しそうに繰り返す。その涙声が、苦しそうに喉の奥で時折つっかえる。
「泣くぐらいならちゃんとやれ」
大きくて澄んでいて光しか見たことのないような強い瞳から、涙が溢れ落ちていく。
「(……なにが、住む世界が違う人間、だよ)」
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