勘を頼りに進むと、廊下の奥から微かに音楽が聴こえてきた。


それがこないだの撮影でひたすら流れていたcoc9tailの曲で、美聖の身体が一瞬強ばる。



ただ足は正直で、その音楽に引き寄せられるように進んでいた。




音が大きくなる。ガラス張りの扉から電気のついた部屋の中を見渡す。





「──あ、」





板張りの床に全面鏡の部屋にひとりの女の子がいた。



スマホで何度も音楽をかけ直し、同じ振り付けを繰り返し繰り返し練習する。



撮影の時も美聖には完璧に見えたダンスを、彼女は何度も頼み込んで撮り直ししていた。