事務所に大事にされて、兄の道の後を順風に追いかけ、持って生まれた美しさをふんだんに使いこなし、平凡なことなど悩まない。



まさに住む世界が違う人間。




「(何も俺がわざわざ違う世界に住む必要なんてない)」



カメラの前で理想を描く自分とかけ離れた自分にうんざりして奥歯を噛み締めるなんて、選ばれた人間が悩むことだ。



美聖は言い訳を連ねて今日の出来事に蓋をする。


誰に言い訳しているのか、それは美聖が一番わからなかった。