目薬で濡らした瞳で向けられたカメラに満足な笑みすら作れず、言葉のないシーンをただ時間の無駄にする。
「……仕方ない。ぼやかして何とかするか」
ぼそりと監督が隣のアシスタントに呟いたのが、やけにはっきりと聞こえた。
美聖はその一瞬、死にたいとすら思った。
「でも今後の事務所看板間違いなしのcoc9tailのMV出たってなったらそれだけで柊くん新人の中では話題勝ちだよ」
ひとり運転席で饒舌な岩井に、美聖は初めて言葉を返す。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…