目薬で濡らした瞳で向けられたカメラに満足な笑みすら作れず、言葉のないシーンをただ時間の無駄にする。





「……仕方ない。ぼやかして何とかするか」




ぼそりと監督が隣のアシスタントに呟いたのが、やけにはっきりと聞こえた。


美聖はその一瞬、死にたいとすら思った。




「でも今後の事務所看板間違いなしのcoc9tailのMV出たってなったらそれだけで柊くん新人の中では話題勝ちだよ」




ひとり運転席で饒舌な岩井に、美聖は初めて言葉を返す。