「遠慮するよ。それじゃファン失格になる。俺は自分の力だけで彼女たちを、息吹さんを応援したいんだ。」

「な、なるほど。(アンタの力があれば大抵のことできるよ…)」

「うん。だから、今回の握手会だって自分の力で手に入れた。」

「(芸能界トップの俳優がガチトーンで何言ってるんだろう…)」




片平の微妙な顔に、美聖は気づかない。再び、窓の向こうを見ては、物思いに耽り、悲しみに暮れたように「はあ…」と溜息を零す。



そして、車が橋に差し掛かった時、美しい横顔を窓下に向けたまま、ふと、美聖が片平に言う。




「俺が飛び降りそうになったら止めてくれ。」

「全力で。」




片平は力強く答える。美聖がバックミラー越しに片平の顔を見て、「助かる」と笑った。その笑顔がやっぱり弱々しくて、男の片平の胸にもくる。


片平はそんな美聖に笑い返しつつも、ハンドルを握る手は強くなる。




───息吹さんには美聖さんと結婚してもらうしかない。