「んーおっけ、10分休憩入れよう。」




見かねた監督の一声で現場がまた新しく動き始める。息吹はその間も美聖から目を逸らさなかった。




マネージャーの必死なフォローも無視して美聖は現場から遠く離れる。


音が聞こえなくなるところまでひたすらに突き進み、階段の踊り場にある窓から外を見下ろした。



やりたくもないこと、なんでこんな必死になってんだ。強がりは行けない方向へと進んでいた。


美聖は素直な弱音を吐いたら悔しさで泣きそうになるのを自覚していた。




「……帰りてえ」




呟く。自分は平気だと。いつも通りだと言い聞かせる。


なんとなくしか生きてきていないいつも通りに戻ったところで、美聖は役立たずのままだということもわかっていた。