美聖の憂鬱を飲み込むように、現場は温かかった。


美聖の見た目を気に入った監督のおかげもあるが、ひとりずつ美聖とのシーンがあるcoc9tailのメンバーが社交的で優しかったのである。




「はい!瑞希おっけーでーす。お疲れ様ー」

「ありがとうございましたー!緊張したー!」




8人目にリーダーである瑞希とのシーンを終えて、美聖はなんとか今日を乗り切れるかもしれないといつも通りを取り戻しつつあった。





「柊くんありがとうございました!俳優志望なんだってね。ドラマ出たら絶対観るよ!」

「あー…、はい、ありがとうございます」




キラキラとお日様みたいに笑う瑞希に、志望するものなどなくてスカウトした林田に「俳優」と勝手に決められてしまっただけなんです、とアイドルデビューの目前の彼女に言えるはずもなく、苦笑いで誤魔化す。