なんとなく、ただなんとなくここに来た。



相手がデビュー前のグループときいて、きっと美聖は心のどこかで安堵していた。



まだプロじゃない、と。カメラにもどぎまぎしているぐらいかもしれない、と。可愛いと言われて喜ぶ女の子たちと重ねていたのかもしれない。





「(ああ、帰りてえ)」




スカウトされたからって生きていける世界なわけがない。ましてや、やりたいことがないからって飛び込む世界だなんてお門違いもいいところ。



美聖は冷たくなった指先を握りしめる力さえもなかった。