「うん、いいね。このまま反転バージョン行こうか」




監督の声に、息吹が頷く。いくつかの指示を受けて、ライトの色が先程よりも青みが強くなる。

音楽がかかってカメラが回った瞬間、息吹の全てががらりと音を変える。



「………、」



可愛い息吹はどこにもいない。同じ衣装なのに、先程の彼女は可愛いを捻り潰すほど魅惑の瞳でカメラを睨みつけている。



その強さに美聖の中に、濁流が押し寄せる。



心拍数が跳ね上がり、手の汗が滲む。呼吸が浅くなる。足の感覚を失い、平衡感覚が鈍る。視界が遠のく。




「(………最悪だ、)」