同年代の女の子を可愛いと思ったことは今までももちろんあった。それが全て作り物であることも、美聖は気がついていた。
鏡の前で練習した可愛い笑顔、甘えるようにはしゃぐ可愛い動き、天然っぽさをアピールするような可愛い仕草。
女の子が作り出す可愛いを、美聖は、素直に可愛いと思ったし、それはそれ以上でも以下でもなかった。
「いいよ、息吹、もう少し吸い込まれる感じで」
監督の指示で、息吹と呼ばれた女の子の動きが一瞬にして緩やかに変わる。
彼女から放たれる全てのものは、彼女のものだ。可愛いも綺麗も、楽しいも移ろいゆく感情の全ては彼女のもので。
息吹と呼ばれた彼女の中に「作り物」はひとつもなかった。全てが本物だった。