なんなら今も時折、控え室で目元を赤くしている。それでも撮影が始まると、彼は〈国民の王子〉である人気俳優の柊 美聖になるのである。



そんな彼が解散後、初めてcoc9tailの握手会へ行くと知り、片平は居てもたってもいられず、送迎を買って出た。


純粋な彼への労いもあったが、万が一、血迷って『死』でも選ばれたら困る。そう思ったのだ。それぐらい、最近の美聖はやられていた。




「僕、coc9tailのマネージャーと同期なんですよ。今回のこともありますし、美聖さんの為に時間作れるよう口利きしましょうか」



片平なりに気を使ったつもりだった。


だが、バックミラー越しに交わった美聖の視線は不快げに細められていた。美しい人の冷たい表情は、相手を凍りつかせるものがある。