年明け早々coc9tailの解散発表があり、それでも慌ただしい日常に揉まれ多くの人が普段通りの日々に戻っている中。
「美聖さん、気抜くとすぐ死人の顔になるのそろそろやめましょうよ」
「coc9tailの年内解散まであと345日になったんですよ。もう20日も経ってしまった。時が憎い。ドラえもんが欲しいとこんなに願ったことはないです」
「(すげえ綺麗な顔して何言ってんだこの人)」
柊 美聖だけは全く立ち直れていなかった。
美聖のマネージャーである片平《かたひら》 啓介《けいすけ》は車を運転しながら、バックミラーでやたらと綺麗な顔の男を見る。
背もたれに身体を預け、窓の向こうを見る姿は憂いを帯びていて、その一枚だけで十分な商品になるだろう。
「(カメラマン呼びてえな……あ、また泣いたな、この人)」
美聖の緻密に美しく完成された顔の、目元が微かに赤い。coc9tailの解散を受けて、美聖は連日泣き続けていた。