「さあ、できました。ふふ、最近はこうしてアリアお嬢様をめいいっぱいおめかし出来て嬉しいです」

「シェリーがうれしいと、アリアもうれしい」

「まあ、お嬢様っ」


 きゅん、という効果音が後ろに鳴っていそうな顔をして、シェリーは感極まった様子で震えている。

 私はというと、これからルザークたちと晩餐を共にするということで、ちょっと……いや超がつくほどドキドキしていた。
 場所は本館で、館の主であるクリストファーもいるからだ。


 三日前は騎士団見学、今夜は本館で初めてのディナー。
 ロザリン兄弟が来てからというもの、こうしたプチイベントが次々に起こっていた。

(本館でディナーなんて聞いたときはびっくりしたけど。クリストファーがいいって言ったってことだよね。……ロザリン兄弟がいるから最低限の体裁を考えたのかな)

 なんて疑い深く思ってみたりもしたけれど、あのクリストファーがそんなことをいちいち考えるだろうか。

(執務室で一緒にいるときは愛嬌と媚びを振りまいて、それが身を結んでるなら嬉しいけど)

 一体いつまで続ければいいのだろう。
 そういえばサルヴァドールとは、その先の話をまだ詳しくしていなかった。

(愛嬌を振りまいて振りまいて……心に隙を作って……それで?)
「アリアお嬢様、お迎えですよ」


 ふと思ったことをサルヴァドールに聞こうにも、私以外の誰かがいる状況ではそれも難しい。

 お迎えのジェイドも来たようなので、ひとまず疑問を頭の隅に置き、目先の関門であるディナーに挑むことにした。