「あの女たちの声が耳障りだったから、少し外に飛ばしてやろうかと思っただけだよ」
「……だ、だけじゃないでしょそれ!」
もし本当にそんなことになっていたら……どう頑張っても言い訳のきかない大変な事態になっていただろう。
「お前は、随分他人事みたいに聞いてたよな」
「どういう意味?」
「ムカついたり、腹が立ったりしなかったのかってことだよ。なんならアイツに言いつけりゃよかったんだ」
「そんなのムリだよ。確かに最近はちょっと構ってくれるようになったけど。わたしが何か言われたって、お父様はどうも思わないもん」
少し皮肉も言えたし、ああいう陰口はスルーするのが一番だ。
そう考えたうえでのことだったのに、私のその振る舞いがサルヴァドールは気に入らなかったらしい。