目と鼻の先にある整った顔。一つ一つのパーツが完璧な位置に収まっており、文句のつけようがない容姿のドアップに心臓が跳ねる。

「顔、ちかいよ」
「……」

 半分のしかかるような体勢でいるサルヴァドールの頬を、片手を使って押し返す。

 素直に押し返されてくれたサルヴァドールは、それでも物言いたげな黄金の瞳をじっと向けていた。

 私は上体を起こして毛布の端を整えたあとで、サルヴァドールに聞き返す。

「昼間のあれって、なに?」
「なにだって? 温室以外にあるか?」
「温室って……聞きたいのはわたしもだよ。どうしてあんな風を出したの?」
「それは――」

 言いかけて、中途半端に口に手を当てたサルヴァドール。
 まるで不貞腐れた子どものようにも見えた。

 契約してからあまり見たことがない姿だったので、私はどうしたのかと不思議になりながら言葉を待った。