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クリストファー込みの温室ティータイムは、意外にも楽しいものだった。
というのも、リューカスさんから学院生時代のクリストファーの武勇伝をたくさん聞くことができたのだ。
学院外の課題で素材収集に来たはずが、突然現れた暴れ竜をたった一人で退治したとか。
在学中、基本他人に関心がなく、無愛想だったため寮の先輩に嫌がらせで近くの廃墟に閉じ込められた際には、建物を吹き飛ばしてきっちり報復したという話など。
たった三ヶ月という短い学院生活の中で、クリストファーは相当好き勝手していたようだ。
やっぱりとんでもないキャラである。
「それでね、お父様はいじわるをした人たちを学院の屋根の上に――」
いつもならすでに眠りについている時間帯。
今日は新しい出会いに加えてかなり活動的だったからか、なかなか寝つけなかった。
「お嬢様、お話はこのあたりで……続きはまた明日にいたしましょう?」
そんな私の頭をシェリーは優しく触れる。
(……そういえば)
その時、思い出す。リューカスさんが現れたときの、私を庇うように脚の後ろに隠して頭に手を置いたクリストファーのことを。
(なんか、嬉しかったな)
ふふっと口元に微笑みを浮かばせ、私はゆっくり目を閉じる。
「おやすみなさいませ、お嬢様」
やがてシェリーが部屋から出てゆき、意識がうとうとし始めた頃。
「お前、昼間のあれはなんだよ」
上から降るように届いたサルヴァドールの不機嫌そうな声音に、私はぱちりと瞼をあげた。
「サルヴァ……?」
そこには人型になったサルヴァドールがじとりと私を見下ろしていて。
半分顔が毛布に隠れた状態のまま、私は思わずそのまま首をかしげた。