突風よりもゼノもルザークも思うところがあるようで、私に視線を投げている。

 言いたいことはわかるけど、私には使用人を咎める権限も立場もないので、メイドに関してはどうすることもできないのだ。

 告げ口をしたところで、ややこしくなりそうだし……。



「アリアお嬢様、ルザーク様、大変お待たせいたしました」
「おーい、ルザーク。ちゃんと仲良くやってるか」

 二人になんと言えばいいか頭を悩ませていれば、ティーセットを運んできたジェイドと、片手をひらひらと振るリューカスさんが現れた。

 なんと、二人の後ろにはクリストファーまでいる。

「ん? そこにいるのは見習い騎士か。って、皆して立ちっぱなしでどうかしたのか」
「兄上……」

 ルザークはちらっとこちらを横目に見た。
 先ほどのことを言うならば、私の口からのほうがいいと思ってくれたのだろう。

「お父様! お父様も来てくれたんだね」
「……、何があった?」

 私が駆け寄ると、クリストファーは周囲を見回したあとでそう言った。鉢植えや柵が倒れているのが目に付いたようである。

「――ううん、なんにも。風で倒れただけ。それより、騎士団すごく楽しかったよ! ね、ルザーク」
「え? ああ、うん。そうだね」

 わざわざ先ほどのことを言うつもりはない。

 同意を求めてルザークに笑いかければ、それが伝わったのか頷いてくれる。意図は理解していないけれど、自分から切り出すことはしないでくれていた。
 
 ゼノも同様に、どこか心配そうに私を見やったあと、何を言うでもなく静かに頭を下げて温室を出ていった。