残された私たちの間には、微妙に気まずい沈黙が落ちる。
「ゼノ、どうしてここに来たの?」
「……こちらを、お持ちしました」
何か言いたげなゼノに質問すれば、そっと手を前に出される。
彼の手には黒地に黄色の線が入った紐リボンが握られていた。
見覚えのあるそれは、ぬいぐるみサルヴァドールの首に結ばれていたものである。
「広場に落ちていました。アリアお嬢様がお持ちになっていたぬいぐるみに付いていたものだと思ったので、お届けに参りました」
「本当だ、いつの間に取れちゃったんだろう。ありがとう、ゼノ」
ゼノから紐リボンを受け取り、私は今も腕の中にいるサルヴァドールの首に結び直そうとする。
「あれ、うまく結べない……」
「アリアちゃん、ちょっと貸して」
手こずっていると横から腕が伸びてきて、ルザークが代わりに結んでくれた。
「ありがとう、ルザーク」
「どういたしまして」
そういえば、さっきサルヴァドールって突風を起こしたよね。あきらかに不自然だったし、ゼノとルザークもいるのになんであんなことをしたんだろう。
幸い風が吹いたのはゼノが裏口を開けたタイミングだったので、いくらでも誤魔化せそうではあるけど。