「こーんな風に難しい顔してたけど、どうかした?」
「それ、アリアの真似?」
ルザークは両方の目尻に指を当てると、横に引っ張るように動かした。狐の目付きを数倍悪くしたような顔だ。イケメンが台無しである。
こんな顔をしていたかと思うと、それをずっと眺めていたルザークはどんな気持ちだったのだろう。普通に変な子だと思われたかな。
「なんでもない。ちょっと、眠かっただけ……」
ゼノが皇帝の妾子のゼノクスじゃないか疑惑を考えていたとは言えるはずもなく、ぱっと思いついた誤魔化しを口にした時だった。
「――ねえ、聞いた? アリアお嬢様、今日はお客様と一緒に騎士団の見学ですって」
「ちょっと前までは放ったらかしにされていたのに、随分と待遇が良くなったのね〜」
温室の裏扉が開かれる音と共に若い女性二人の声が聞こえてきた。