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ゼノクス・デル・ヴァリアス。
ヴァリアス帝国皇帝の妾子である彼は『リデルの歌声』に出てくる敵役だった。
ほぼラスボスに近い立ち位置と言って過言でもないゼノクスは、幼少の頃に皇室を追われて死に物狂いで生きてきたという壮絶な過去がある。
(それで、ゼノクスも悪魔との契約者だった。彼もリデルの歌声で浄化されたとき、過去の背景がいくつかわかったけれど……)
それは皇城にいたときの朧気な記憶と、身を寄せていた場所に居られなくなったゼノクスを敵サイドの公爵家が引き取った頃の記憶ばかりだった。
ここで言う敵サイドの公爵家というのは、皇室の傍系にあたる公爵家で、グランツフィルではない。
『リデルの歌声』には、ヒーローであり皇太子であるギルバートと、そんな彼の地位を引きずり下ろそうとする敵勢力との後継者争いも描かれている。
ゼノクス・デル・ヴァリアスというキャラクターは、その敵勢力が秘密裏に用意した、切り札そのものだったのだ。