やがて模擬戦開始の合図がラオから出され、まず正騎士たちが三組ほど華麗な剣さばきを披露してくれた。

 あくまで客人に見せる剣闘試合なので、血なまぐささが全くなく綺麗なものだった。

 飾らない普段の訓練風景も気になるけれど、これはこれで見応えがある。
 いつの間にか私は夢中になって見入っており、手に汗まで握っていた。

 中でもソードマスター候補と呼ばれる騎士同士の模擬戦は凄かった。

 体内の魔力を「オーラ」という力に変え、剣や身体に纏わせて戦うんだけど。
 魔法とはまた違った不思議な光景に圧倒されてしまった。

 グランツフィル騎士団には、二人のソードマスターがいるらしい。
 今は領外に出ているということで私も見たことはないけど、相当の腕を持っているそうだ。

「あ、ゼノだ」

 正騎士たちの模擬戦のあと、出てきたのはしっかり胸甲を装備したゼノだった。その手には、(ヘルム)を持っている。

 同じくゼノの相手と思われる騎士も出てきた。つい先ほど模擬戦を繰り広げた騎士たちよりも、いくらか若いようだ。

「あの者は準騎士です。去年13歳で見習い期間を満了し、今は14歳です」
「14歳? ゼノ、8歳だけど大丈夫?」
「ゼノは見習いの中でも群を抜いて実力が高いと報告を受けています。問題ありませんよ」

 ルザークもそうだと言っていたけど、一体どれほどのものなんだろう。

 視線を再び戻したとき、ゼノはちょうど兜を被ろうとしているところだった。

 見習い騎士は原則、安全措置として剣を交えるときは兜と鎧を装着する義務がある。
 通常の騎士は鎧よりも制服が主体という感じの騎士服を着ているんだけど、一応それにも鎧のような役割はあるらしい。魔物の皮などを使って仕立てているので丈夫なんだとか。

(…………ん?)

 そして、兜を被ったゼノを遠目から見ていた私は、何となく既視感のようなものを覚えて首をかしげた。