ラオはもう少しで模擬戦を始めると告げて、ほかの騎士たちの元へ向かっていった。
「皆、アリアお嬢様にお会いできて気が昂っているようですね。きっと素晴らしい剣技を見せてくれることでしょう」
さりげなく騎士たちにプレッシャーを与えるジェイドの言葉を聞きながら、私はある方向に目をやった。
「子どもも結構いるね」
広場の隅っこには、私よりいくつか歳上だと思われる子どもの姿があった。
男の子が多いけれど、女の子も何人かいる。そして共通しているのは、紺色の制服を着ているということ。
「あちらにいるのは、グランツフィル騎士団の見習い騎士です」
「見習い……あ、ゼノ!」
数人の子どもたち中に見知った顔を見つけた私は、自分が思うよりも大きく声を出していた。
呼ばれた本人は驚いた様子で振り返り、ほんのりと赤い瞳を見開く。
「知ってる子?」
「うん、前に書庫室で会ったことがあるの」
ルザークにそう答える。ジェイドは以前報告を受けて知っていたのか、見当がついた様子だった。
(ゼノとは書庫室でばったり会って以来、一度も顔を合わせなかったんだよね)
しかも私はあの時書庫室で倒れてしまい、付き添ってくれたゼノからしてみれば完全にとばっちりだっただろう。
(一言でも謝りたいな)
私の気持ちが伝わったかのように、ゼノはこちらに近寄ってくると丁寧に会釈をした。
「アリアお嬢様に、ご挨拶申しあげます」
「こんにちは、ゼノ。久しぶり」