私とルザークが見学に来たということで、どうやら今から一体一の模擬戦をしてくれるらしい。
私は騎士の方々が用意してくれた椅子に腰掛けた。わざわざ日除けの大きな傘まで持ってきてくれて、なんだか申し訳ない。
「アリアお嬢様、温かいお飲み物はいかがですか」
「ひざ掛けもございますので」
「模擬戦が始まるまで何か芸でも披露しましょうか」
こうして、さっきから至れり尽くせりな状況が続いている。
騎士たちは嬉々とした眼差しをこちらに向け、我先にと私に声をかけようとしていた。
同じく隣に座るルザークが「アリアちゃんモテモテ〜」と茶化してくる。面白そうにはしているけど、自分は遠慮したいのか少しだけ距離を取られた。おい。
「ありがとうございます。飲み物いただきます。ひざ掛けも。芸は気になるけど大丈夫」
遠慮がちに笑みを向ければ、どの騎士も噛み締めるように拳を握っていた。
……自分でもアリアとしての容姿は美幼女だと思うし、きっと愛嬌を振りまけばそれなりに可愛いという自負はあるものの。
ここまで感涙されると逆に怖い。思わず遠い目をしそうになった。
「お前たち」
そこへ、見かねたラオ副団長が現れる。
彼の「散れ」の一声で、騎士たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなる。
「ありがとう、ラオ副団長」
「私のことはラオとお呼びください、アリアお嬢様」
そう言って、ラオは穏やかな表情を浮かべた。
ラオはクリストファー並に表情筋が乏しいけれど、常に洗練された騎士の佇まいがあって、近くにいると気持ちが引き締まるようだ。
でも、たまに向けてくる優しい顔つきは、彼の心根を物語っているみたいだった。