「全員、整列!」

 副団長ラオの声掛けと同時に、広場付近にいた騎士たちが一斉に集まってくる。
 前もって私たちの見学が伝えられていたようで、外周担当以外は集合しているみたいだった。

(わあー……みんな動きが揃ってた。ビシッとしててかっこいい)

 前世で騎士といえば、中世ヨーロッパや『リデルの歌声』のようにゲームや物語上で出てくるイメージだ。

(制服は真っ黒なんだ。これだけ揃うと圧巻だな〜)

 本物の騎士を大勢目の前にして、なかなか興奮が収まらない。
 ぎゅっとサルヴァドールを抱きしめながらまじまじと見つめていれば、一歩後ろに控えていたジェイドがクスッと笑う。

「いかがですが、グランツフィルの騎士(ヴォルフ)たちは」
「ヴォルフ?」
「あちらをご覧ください。団旗に動物を模した絵が描かれたいるでしょう」
「本当、おおかみ!」

 白地の団旗には孤高の黒狼が君臨している。
 そして狼の周りには、黄金の光を散りばめたように模様が添えられていた。

「オオカミの騎士なんてかっこいい! すごいねジェイド!」

 早朝挨拶で遠目に騎士の姿を見ていたとはいえ、やっぱり間近だと迫力が違う。
 何よりも一人一人の顔がはっきりと窺えて、より実感が湧いていた。

「お嬢様がこんなにも喜ばれるのなら、もっと早くにお連れすればよかったですね」
「ううん、いいの。お父様が行ってもいいって言ってくれたから来れたんだもん。アリア、それも嬉しかったんだ〜」
「……そうでしたか」

 ジェイドは少し面食らったあとで、微笑ましそうにした。

(あれ、なんか圧を感じるような……)

 横からひしひしと伝わってくる視線に顔をそちらに向けると、

(いけない。整列しているのに夢中になってジェイドと話してたっ)

 たった今整列したばかりの騎士たちから一斉に見つめられていることに気がついた。