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執務室を出た私は、ルザークとジェイド、そして副団長ラオを含めた四人で騎士団に向かっていた。
ラオが先頭、次に私とルザークが横並びで歩き、その後ろにジェイドが見守るようにしている。
そして両手にはサルヴァドールを抱えていた。
ちなみに副団長ラオさんは、クリストファーへの早朝挨拶のときに顔だけは何度も見ていた。こうして一緒に行動するのは初めてである。
「アリアちゃん、寒くない?」
「うん、平気だよ」
「そっか。寒くなったらいつでも上着を貸すよ。レディを凍えさせるわけにはいかないからね」
紳士的なルザークは、私が寒くないか、歩きづらくはないかを常に気にしている。9歳にして色々と出来上がっているのは誰の影響なのだろう。
ちらっと渡り廊下から見えたメイドたちにも愛想笑いを浮かべていたし、気のせいでなければウィンクもしていたような……。
「こんなに可愛い子と騎士団を回れるなんて、日頃の行いに感謝しないといけないね」
ルザークはキラキラと背中に花でも背負っているのかと言いたくなるオーラを醸し出している。
執務室にいたときはまだ大人しかったほうだけど、これがおそらく完全なる素の姿なんだろう。
まだ慣れないタイプではあるものの、気さくに話してくれてありがたくもある。
「ルザークは、騎士になりたいの?」
「興味はとてもあるね。それにグランツフィル騎士団は帝国内でも精鋭が揃っているから、一度訓練風景を見てみたいと思っていたんだ」
「へえ……すごいんだね」
私の他人事すぎる感想に、ルザークは不思議そうに見返した。
「あれ、知らない?」
「うん、あんまり」
けれどルザークはへえっと軽く相槌を打つだけだった。