「マイスター……」
「おっと、すまないな。マイスターというのは――」
私の小さなつぶやきにリューカスさんは丁寧に説明してくれる。
彼からすると私はまだ5歳児だから知らないものだと思っているのだろう。
マイスターに関する情報は、リューカスさんの説明と私が覚えている記憶に差異はなかった。
「クリストファーは在学三ヶ月で二称号を取得したからって、さっさと領に帰ったんだ。もう学ぶことはないと言ってな、とんでもない奴だろう?」
「わー……お父様ってすごいんだね」
「……」
パッとクリストファーの顔を見ると、自分の話をされているのに淡白なものだった。
私はふと思った。
帝都学院は基本的に15、16から入学が許可される。
クリストファーがその年齢の頃は、まだ前公爵が生きていたはずで。帰えざるを得なかったんじゃないかって。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「ううん、なんでもない」
私は何となくやるせなくなっていた気持ちを覆い隠した。今はマイスターの話である。
聞けば現在帝国内でマイスターの称号はクリストファーだけが持っているという。