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「俺はリューカス・ロザリン。こっちは弟のルザークだ」
テーブルを挟んだ向かい側のソファには、謎の男リューカス改めリューカスさんと、にっこりと笑みを浮かべた男の子が座っていた。
「ルザークです」
リューカスさんの年の離れた弟、ルザーク。公爵邸への突然の来訪者は、この二人だった。
薄紺色の髪と緑の目をしたルザークは、リューカスさんと兄弟らしく顔立ちも雰囲気も似ている。
ちょっとタレ目なところとか、クリストファーを前にしても臆していないところとか。
「はじめまして、アリア様。お会いできて光栄です」
「はじめまして、ルザーク。わたしのことは、アリアでいいです」
「本当? なら、アリアちゃんって呼ぼうかな」
ただ、初対面の印象だけ見ると、リューカスさんよりも少しだけチャラそうである。
「しっかり挨拶ができて偉いな。確かまだ5歳だろ? さっきは驚かせたが今は人見知りもしていなさそうだ。ほかにも来客の対応をしたことがあるのか?」
「いえ……ないはずですが……」
と、私が座るソファの後ろあたりに佇んだジェイドがこちらを窺い見ながら言った。
「……」
同じく、横からもクリストファーの視線を感じた。
正面のソファにはロザリン兄弟が、反対側には私が一人で座っている。
そしてクリストファーは一人掛け椅子に腰を下ろしていて、ジェイドは私とクリストファーの中間距離に立っている状態だった。
(どうせなら隣に座ってくれてもいいのに。こういうところはまだ"そのまま"って感じなんだよね)
ほんのりと寂しい気持ちになりながら、私はいつも通り持ってきていたぬいぐるみサルヴァドールを膝に乗せる。
そして口を開いた。
「お父様のお客さまだから、平気です。アリアも仲良くしたいです」
ジェイドが言っていたように私が公爵邸以外の、外部の人と会うのはこれが初めてだ。
それでも挨拶くらいはできる。登場時のインパクトが強烈だっただけで、特に人見知りとかではないし。
「別段仲良くはない。それと、こいつに敬語はいらないはずせ」
「うん、わかったお父様」
ということで、早々に敬語は無しになった。
言葉遣いに関しては公爵のクリストファーが言うのだから、わざわざ背く必要もない。
「おいおい。三ヶ月だけとはいえ同じ寮で寝起きした仲だろう? 暇さえあれば便りだって送っているっていうのに、仲良くないはないだろ」
「俺から送ったことは一度もない」
「それはお前が人付き合い下手だから……」
「話はもう終わりか?」
「待て待て待て待て」
関心がなさそうに見えて会話は続いているし、クリストファーが本気で席を立つ気配は今のところなかった。
リューカスさんと仲が良いというのは、あながち間違いではないのかもしれない。
(あれ、そういえば……寮って?)