20代半ばかなとぼんやり予想していたわけだけど。まさか23歳だとは思わなかった。

 正直後半といっても違和感ない風貌だし、漂うオーラと公爵としての威厳もあるからか驚いてしまった。

(今が23なら、5年前だと……18歳!?)

 この世界の成人年齢は18なので赤子を引き取ること自体は大きな問題にならないだろうけど。
 となると、公爵位についたのもそれぐらいということだ。私からするととんでもない人生である。

「お父様……すごく若かったんだね」

 思わずため息混じりにつぶやくと、クリストファーの片眉がほんのり反応した。

「若い、とは。5歳の子どもが口にする感想とは思えないな」
「お父様大人っぽいから、もっと上かと思ったんだもん」
「俺が年老いて見えるということか?」
「そうは言ってないよ。大人っぽくてかっこいいって意味」

 前は話したいと思わない、とまで言われていたのに、こうして顔を突き合わせると案外会話は続いている。
 テーブルを挟んだ向かい側に座っていると言っても、一向に目は合わないんだけど。

 そしてこの会話を横で静かに聞いているジェイドは、淡々と話すクリストファーの様子に目を見張りながらも密かに笑みを浮かべていた。

「お父様はどのお菓子がすき? アリアはね、このジャムが入ったクッキーが今のところすき」
「興味ない。食べるつもりもない」
「ええっ、食べないの? 本当に?」
「何か問題なのか」
「アリア、全部は食べきれないから。残しちゃうの悪いかなぁって……」

 色んな種類を用意してくれたけど、たとえこの三人でも完食するのは難しそうな量だ。

「……そう思うのなら、次は食べたいものを予め幾つか決めておけばいい」
「次?」

 不意に出たクリストファーの言葉に、私は目を見開いて聞き返していた。