どうしてそんなことをしたのかというと、理由はただ一つ。
義理の父親であるあの人に、気にかけてもらいたかったからである。
でも、私と義父の関係の前に、もうひとつ重大な事実を受け止めなければいけない。
それはこの世界が、あるノベルゲームの舞台になっているということだった。
恋愛ファンタジーノベルゲーム「リデルの歌声」。
天族――またの名を天使という種族の血筋であるヒロインのリデルと、ヒーローである皇太子が紆余曲折を経て結ばれるまでを描いた恋愛ストーリー。
そして私の義父、クリストファー・グランツフィル公爵は、ゲーム第一章での黒幕であり、リデルが覚醒をするために存在する悪役だった。