なぜと言われれば、お礼がしたかったというのが一番だ。
 まさか連れてきてもらえるとは考えていなくて、単純に感動していたのである。

(その場の雰囲気に流されて、つい勢いで持ってきちゃったけど)

 ただルナキュラスを凝視するだけのクリストファーを見ていたら、興奮していた気持ちも落ち着いてきた。

「アリアをここに連れてきてくれてありがとう。嬉しかったから、これはお父様の分」
「……分?」
「うん、お父様の分だよ」

 アリアとしての私は、ルナキュラが「願いの花」だと云われていることを知らない。
 だから詳しくクリストファーに説明はできないけど、「この喜びがあなたにも訪れますように」的なニュアンスで花を贈ってみた。


 だって、少し寂しいと感じてしまったから。

 どれだけ景色が美しかろうと、まるで自分だけここに存在しないかのように立っているクリストファーの姿が。

(笑って、くれないかな)

 たぶん、もうとっくに。
 ノベルゲームの世界だの義父だのなんだと置いといて、家族としての情が芽生えてしまっている。