「やっと見つけた……お前、危ないから走んなよ。つか俺を置いていくな」

「桐谷くん……!」


安心して涙腺が緩む。
するとそんな私を見て彼はため息をついた。


「はい確保」
「えっ」


腕を掴まれて、そのまま手を握られる。
彼の手は温かいのに少し湿っぽくて、ドキドキしている種類がひとつ増えてしまう。


「また置いていかれたら嫌だから。ほら行くぞ」
「え、う、うん」


階段を上って、矢印の通りに進んでいく。
怖いけれど、桐谷くんが手を繋いでいてくれるおかげで少しましになった気がする。

だけど――


「きゃーっ!」
「あ、こら!」


懲りずに走りだそうとする私を、繋いでいる手を引っ張って止めてくれる。


「ご、ごめんね桐谷くん」
「いいけど……ほんとに大丈夫か?」
「うんっ、大丈夫だよ」


なんだかずっと心配してくれている彼が少しでも安心できるよう、にこりと微笑みかける。

しかし残念ながら効果はなかったようで、納得していない表情のまま歩き出す。